空の名前
上を向いて歩こう。
『空の名前』は、高橋健司による写真集、天候や季節の移ろいを300点ほどの写真で構成した図鑑である。当初は光琳社出版から刊行され、現在は角川書店から刊行されている。
昔読んだ4コマ漫画の「かりあげクン」で、こんな場面があった。主人公のサラリーマン男性かりあげクンが、会社の付き合いと思われる中年男性の入院先の病室に、お見舞いに行く。入院中の中年男性が、病室のベッドで見舞客に笑顔で応じながらも、次から次にくる見舞品の花に「花か……」「また花か……」と内心思っていたところ、同じく見舞客のかりあげクンが本を持ってきたので「おー、本か」と心から嬉しそうにする。その本が、花の図鑑というオチだった。
これを読んだ時、気が利いてて面白いと思い、いつか試したいと思っていた。それからだいぶ後に、SNSで知り合った年上の知り合いが検査入院することとなり、見舞いに伺うこととなり、実践の機会に恵まれた。私が渡したのは花の図鑑ではなく、この「空の名前」だったが、ひとまず喜んでくれたようでホッとした。金額的にも安すぎず高すぎず、相手が退院後にご自宅に置いたままでも、不要物にはなっても害にならないだろうと、処分するにしてもさほど困らないだろうと、その後の成り行きも計算した上で選んだ。
冒頭で書いた通り、空の写真だけで構成されているが、実に様々な場面を切り取っているので、美術書としても見応えがある。雑誌でもネットでも多い感想としては「空を見上げる心の余裕を忘れていた」「実物の空は、どんな素晴らしい写真でも印刷でも表現できないぐらい素晴らしく美しく立体感に満ちて、そして遠くに浮かんでいる」などだ。
私は雑誌「ダ・ヴィンチ」の特集で知ったのがきっかけだったが、一般読者からの感想で「このセンスが国語や理科の教科書に欲しい」というのがあり、実に的を射たものだなと、今でも時々思い出す。
題名が記す通り、空の写真に付随して、それぞれの空の形態ごとの名称が解説されている。天空から降り注ぐ太陽の光「天使の梯子」や、太陽と同じ高度にあり、太陽から離れた位置に光が見える「幻日」も収録されている。美しく迫力があるのに穏やかなので、見ていて飽きない。いかにも写真集らしく品質の良い紙を使用していて値段も少々高いが、あまり大きくないのでさほど荷物にならないだろう。病院の見舞客への持参品には是非オススメしたい。
そしてもちろん、自らの観賞用にも申し分ない。
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- 空の名前
- SORA NO NAMAE
- 公開:2021年01月22日
- 更新:2022年08月26日
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