CROSSWHEN

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この石ころだって役に立つんだよ。

みち』は、フェデリコ・フェリーニ監督による映画である。日本では1957年に公開された。本編108分。音楽はニーノ・ロータが担当している。

旅芸人の粗野な男ザンパノ(アンソニー・クイン)は、芸の手伝いをする女が死んでしまったため、死んだ女の姉妹ジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)をタダ同然で買い取った。暴力を振るうザンパノと、頭が弱いが心の素直なジェルソミーナは共に旅に出る。道化の格好で芸をするジェルソミーナは、新しい生活にささやかな幸福さえ感じていたが、ザンパノの態度に嫌気が差し、街へと逃げていく。そこで陽気な綱渡り芸人に出会う。ジェルソミーナはザンパノに連れ戻されるが、綱渡り芸人のいるサーカス団に合流することになる。綱渡り芸人はザンパノと古くからの知り合いらしく、何かとからかってザンパノを逆上させる。ある日、限界を超えたザンパノはナイフを持って追いかけるのだが、その行いで逮捕されてしまう。サーカス団から追放された綱渡り芸人は、ジェルソミーナに助言を与えて去って行く。翌日、ジェルソミーナは釈放されたザンパノを迎え、二人だけで芸をする日々を過ごした。しかし後日、ザンパノは故障した自動車を修理する綱渡り芸人を見かける。仕返しする機会を待っていたザンパノは、綱渡り芸人を撲殺する。亡骸のそばから離れようとしないジェルソミーナは、綱渡り芸人の死に放心状態となった。

ザンパノは、大道芸のアシスタントとして役に立たなくなったジェルソミーナを見捨て、居眠りしている彼女を置き去りにして去っていく。

数年の時が流れ、見知らぬ海辺の町に立ち寄ったザンパノは、耳慣れた歌を耳にした。ジェルソミーナがよくラッパで吹いていた曲だった。ザンパノが尋ねると、ジェルソミーナと思われる女が、しばらくその海岸を放浪していたが、誰にも省みられることなく死んでいったという。海岸にやってきたザンパノは、孤独感に打ちのめされ、ひとり嗚咽を漏らすのだった。

監督のフェデリコ・フェリーニは、映画界の巨匠のひとりであり、音楽担当のニーノ・ロータは、クラシックと映画音楽の分野で活躍した大御所のひとりである。二人はコンビを多く組んでいて、「道」もそのひとつにあたる。本作の主演女優ジュリエッタ・マシーナは、フェリーニ監督の実の妻にあたる。本作は、フェリーニ監督の代表作のひとつで、アメリカのアカデミー外国語映画賞を含む数々の映画賞を受賞した。日本でもテーマ曲も含めてヒットして久しく、1957年の第8回NHK紅白歌合戦では日本語で歌が歌われ、2010年のカナダのバンクーバー冬季オリンピックではフィギュアスケート男子シングルの高橋大輔選手がこの曲を採用した演技で、同種目日本人選手初の銅メダルを獲得した。

半世紀以上前の作品ということもあり、映画好きな人種でいえば、著名な映画評論家から市井の映画好きの人の言葉まで、ありとあらゆる人に語り尽くされた名作のひとつである。

物語の途中で、綱渡り芸人が、道ばたの石ころになぞらえてジェルソミーナを励ます台詞が特に有名である。

登場人物たちを深い悲しみが待っている。残酷な結末なのに感動する。

日本人好みというのもあるのだろうけど、題名も本編も素晴らしい作品だと、私は思う。

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LA STRADA
公開:2021年05月25日
更新:2022年07月16日