CROSSWHEN

***

デビッド・モース

I've tried to let the work I do speak.

デビッド・モース(David Morse)は、俳優である。1953年10月11日生まれ。米国マサチューセッツ州出身の男性で、奥さんと3人の子供がいる。最近は「デヴィッド」と表記されることが多い。

トム・ハンクスが主演した2000年公開の映画「グリーンマイル」では心優しい看守のブルータルを演じ、ビョークが主演した2000年公開の映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」では主人公に撃ち殺された後に陽気に歌って踊る警官ビルを演じた大柄の白人男性といえば、役者の名前は知らなくともピンとくる人もいるだろう。

たれ目、童顔、大男。そんな表現がぴったり当てはまる。身長が190cm以上(6フィート4インチ)ある長身なので、出演する作品によっては、図体や熊のような外見を話題にされる場面もある。脇役が多いので、映画の中ではセリフも出番も多くはないが、善人から悪役まで演じる幅が広く、小規模映画からハリウッドの巨編大作、果てはカンヌグランプリ受賞作まで、非常にたくさん出演している。中でも、警官、刑事、看守など、制服組の公務員を演じることが多い。

2001年公開の映画「プルーフ・オブ・ライフ」では、共演のラッセル・クロウが「役者として尊敬している」と発言し、監督のテーラー・ハックフォードは「一度組んでみたかった。素晴らしい役者だ」と評した。2002年年公開の映画「アトランティスのこころ」では、監督のスコット・ヒックスが「デビッドは米国が生んだ名優のひとりだ」と説明している。(いずれも映画のDVDに収録された解説音声で)

モデルのような美男美女の主演級スターに比べると、ルックスも存在感も、どうしても平凡で地味な印象を受ける。一方で、動画投稿サイトのYouTubeで見かける欧米人の日常生活の動画に登場する一般男性と比較すると、顔が小さくて背が高くて手足がスラッと長くて、それなりに顔も端正だと気づかされる。つまりは、アメリカに行けばその辺を歩いてそうな庶民的な人に見えて、やはり映像の世界で渋く光る存在感を放つ存在、それがデビッド・モースだと分かる。

たたきあげの警官や刑事、あるいは職人気質の頑固オヤジみたいなキャラが適役だと思う反面、若い頃の写真を見ると、今の大柄な体からは想像もつかないほど痩せている。初期の出世作であるテレビシリーズ"St.Elsewhere"では、警官でも刑事でも看守でもなく、病院を舞台にした医者の役を長らく演じていた。

笑顔が印象的な人で、彼のニコニコ笑顔が世界中にあふれたら、この世から戦争なんてなくなるのではないかと思う。一方で、短気でしかめっつらで怒鳴り散らす演技も非常に自然に振る舞えるので、本当に幅広い。

個人的には、携帯電話やパソコンやインターネットが登場する現代劇より、西部開拓時代や大恐慌時代など古き良き時代を描いた時代劇のほうが、似合う役者だと思う。たとえば通信手段を例にあげても、デジタルな携帯電話を扱うより、ジーコジーコと番号を回して操作するアナログな電話のほうが、よく似合う気がする。その意味では、大恐慌時代のアメリカを舞台にした、古めかしい電話機を扱う場面が登場し、看守を演じた「グリーンマイル」は、彼のためにある役だと思う。今後「グリーンマイル」がリメイクされたとしても、他のどの役よりも、ブルータルを演じたデビッド・モースは完璧すぎて、これを超える役者はいないだろうなと思う。

彼を見た人なら誰でも一度は考えるとは思うが、紋付袴の姿か、サンタクロースの格好を拝んでみたい。絶対に、絶対に似合う。


デビッド・モース
David Morse
公開:2021年10月11日
更新:2022年06月11日