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学校III

私 45才 生徒です。

『学校III』は、山田やまだ洋次ようじ監督による映画である。1998年に公開された。本編133分。

職業訓練校を舞台に、自閉症の息子を持つシングルマザーの中年女性を中心にして、リストラや中高年の再就職等の社会問題を絡め、人生の再出発をかけて集った人々の心の交流を描いた作品である。

小島紗和子(大竹おおたけしのぶ)は、過労死で夫を失い、自閉症の一人息子、富美男(トミー)と二人暮らし。零細企業に勤めていたが、不況の影響で解雇され、再就職に向けて技術専門学校に入校する。そこには倒産した町工場の社長、経営に失敗した喫茶店のマスターなど、さまざまな事情の中高年が集まっていた。

生徒のひとり、高野周吉(小林こばやし稔侍ねんじ)は大手証券会社をリストラにより退職した男性だが、クラスに交わらない。しかしふとしたきっかけで紗和子と親しくなり、ほのかな感情が芽生えていくが……。

映画公開自体は1998年だが、不況下の日本のどこにでもありそうな話を、社会的弱者の視点から、優れた役者の演技で紡いでいる。紗和子が解雇される場面に始まり、職業訓練校での新たな出会い、周吉との淡い恋愛、再就職、そして……と話が続く。その他の登場人物についても、細かいエピソードで人それぞれの人生を浮かび上がらせていくあたりがうまく、また、見ていてつらい部分もある。

ラストは、紗和子が病院で手術に臨む場面で終わる。病室の廊下、その窓の向こうからは雪が降っている。中島みゆきの主題歌「瞬きもせず」が流れるが、ストーリーにとても合っていて感動的だ。

山田洋次監督の「学校」シリーズは全部で4作ある。一般には夜間中学を舞台にした1作目が最も有名だだろう。ここで紹介したのは3作目にあたる。主題歌も中島みゆきの作品としてみるなら、次に発表された「地上の星」のほうが、知名度も売り上げも話題も明らかにずっと上だ。

だけど個人的には非常に印象に残る。結末もはっきりしたものではないが、静かな感動を残す。

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学校III
GAKKO III
公開:2021年10月17日
更新:2022年07月16日