ひまわり
哀しく激しく燃えさかる女の心に、咲き乱れる ひまわりは愛のかげろう
『ひまわり』は、ヴィットリオ・デ・シーカ監督による映画である。日本では1970年に公開された。本編107分。
イタリアのナポリの女性ジョアンナ(ソフィア・ローレン)と出会ったアントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)。二人はすでにけっこういい年齢だが、深く愛し合う仲で、教会で結婚式を挙げ、短い愛のひとときを得る。しかしイタリアは戦時下。アントニオは兵士としてロシア戦線に招集されてしまう。
やがて戦争が終結するが、出征したアントニオの消息はようとしてしれない。息子の安否を気遣う義理の母を「きっと彼は生きています」と激励するジョアンナは、決断し、ひとりロシアの地に赴く。方々を巡り、様々な土地を訪ね人を訪ね、その果てに、やっとアントニオの消息を知る。
彼は生きていた。しかしロシアの地で彼は別の女性と結婚し、ひとり娘までもうけて、すでに別の家庭を歩んでいた。
彼と彼の妻、そして子供をまのあたりにしたジョアンナは失意の内にイタリアに帰る。そんなジョアンナの存在を再確認したアントニオは、妻の同意を得てひとりイタリアに戻り、イタリアにあるジョアンナの家で再会する。
「もう一度やり直そう。今の何もかもを捨てて」と問いかけるアントニオ。しかしジョアンナにもすでに特定の人がいて、子供がいた。戦争によって互いが引き裂かれ、昔のように戻ることはできない。現実を目の当たりにしたアントニオは、ロシア行きの列車に乗る。それを見送るジョアンナ。
戦争の悲劇を描いた映画はたくさんあるが、これも有名な作品のひとつで、ご存知の方は多いと思う。物語の筋そのものは複雑ではなく、登場する人物の数も多くない。映画本編ではそれぞれの役者が見事な演技で、話に迫真性を持たせている。
どの役者の演技も素晴らしいが、中でも映画の中盤、やっとのことで愛する男の消息を知ったジョアンナが、打ちのめされて列車に駆け込んで号泣する場面は特に有名だ。
上の簡単なあらすじだけを読めば、いかにもアントニオと実際に結婚したロシアの女性が悪者っぽくもみえるかもしれないが、この映画、どの登場人物も結局のところは悪者でなく、それぞれに戦争という暗い過去をひきずったために運命を狂わされたということが、非常に重い。多くの日本人にとって、全然馴染みのないイタリア語の響きが延々と繰り返される映画。哀しい結末が用意されているが、話のテンポも良く、どんどん映画の世界に入っていけると思う。せひご覧いただきたい。
この映画で主役の男女を演じたソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニは、1994年のアメリカ映画「プレタポルテ」にも出演している。
「ひまわり」において、ロシアで映画の撮影をした際、ソフィア・ローレンは人気女優だったため、現地のロシア人に花束贈呈などの熱烈歓迎を受けて、終始ご機嫌の笑みだったという。不幸を背負った大人の女の表情は、まさに名演技の賜物だったのだ。
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- ひまわり
- I GIRASOLI
- 公開:2021年09月30日
- 更新:2022年07月16日
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