CROSSWHEN

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男と女

たちきれぬ過去の想い。それでもかれ合う男と女。

おとこおんな』は、クロード・ルルーシュ監督による映画である。日本では1966年に公開された。本編104分。第39回アカデミー賞外国語映画賞、脚本賞受賞を受賞した。

妻に自殺されたカーレーサーの男ジャン=ルイ(ジャン=ルイ・トランティニアン)と、スタントマンの夫を事故で失った女アンヌ(アヌーク・エーメ)。それぞれ相手に先立たれ、ひとり残された子供を寄宿舎に預けている。週末、子供を連れて久々の親子の時間を取り、子供を寮に戻した時は夜だった。偶然にも帰りが一緒になった二人は、ジャン=ルイの運転する車に乗った。明るい話題の延長線で、互いのことを語り始める二人。それが出会いだった。

ジャン=ルイとアンヌは、すぐに仲を深める。休日になると、それぞれの子供を連れて四人で外へ繰りだすようになる。そして……。

愛するものを失った子持ち同士、それぞれの過去をひきずりながらの大人の恋愛。この映画を一言でいうなら、それに尽きる。

この映画はクロード・ルルーシュが監督・脚本・撮影の三役を手掛けた。当時28歳。しかし公開するやいなや、冒頭で示した米国アカデミー賞以外にもカンヌ映画祭グランプリを含む、数々の賞を受賞した。人と人との間に往き交う、必ずしも理屈で割り切れるものではない、感性で愛を交わすことを、この映画は映像や音楽で見事に表現している。

恋愛映画の定番のひとつであり、フランシス・レイによる有名なダバダバダというテーマ曲は、テレビCMやBGMを通じて聴いたことは誰にもあるだろう。

セピアやモノクロームのカラーを巧みに織り交ぜた、その斬新な映像と演出が際立っている。現代の、たとえばプロモーションビデオに見慣れた人には違和感ないかもしれないが、1960年代当時で20代の若手が手掛けたにしてはやはり群を抜いた才能である。

映画本編では、ジャン=ルイと息子アントワーヌ、アンヌと娘フランソワーズ、それぞれの親子の何気ない会話からまず幕を開ける。続いてジャン=ルイとアンヌの出会い。4人揃っての楽しい回遊。合間を挟んで、2人がそれぞれの相手を失うに至った過去が、回想場面として語られる。そして終盤の場面に至るまで、全ての場面の映像がとにかく「綺麗」。会話なども、ものすごくありきたりで何気ない内容なのに、編集の妙か、とても洒落て都会的な響きに満ちている。例えばコカ・コーラをネタにこんなトークをする映画は、この作品以外におそらく存在しない。

古今東西、恋愛を描いた芸術は、映画、詩歌、書籍などいくらでもあるが、この映画は大人の恋愛のひとつの完成形である。主演のふたりの演技のなせるわざか、映画の雰囲気からして落ち着いていて、でもどこか情熱的で、ひきずるような余韻もある。若者のさわやかな恋愛と根本的に異質だ。

ちょっと強引だなと思うのは、二人とも子供がいて、現実にこんな話があったら間違いなく子供の存在が恋愛の障害になりそうなのに、この映画では子供はむしろ恋愛感情の促進剤的役割を果たしている。二人を隔てるのは、それぞれのかつて愛した人を亡くしたという想い出だけ、ということ。しかしその設定だからこそ、ギリギリ生々しくなく、話の雰囲気を盛り上げるのに成功したのだろう。

この映画は主要スタッフやキャストをそのままにして続編がいくつかある。よろしければそちらもご覧あれ。

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男と女
UN HOMME ET UNE FEMME
公開:2021年10月15日
更新:2022年07月16日